世界で15,000 種,日本では約2,000 種が記録

 ハエ目に属する昆虫で、これほど至る所で見られる動物はいない。

 幼虫は山地の渓流から河口まで,さらに海にも生息している。淡水域ではしばしば優占種となる。水生だけでなく,陸生,湿生の種も少なくない。

 

ヒマラヤの氷河、南極にも生息

 ヒマラヤの標高5,600 m の氷河からも報告されている。南極の有翅昆虫はユスリカだけと言われる。種によっては幼虫が強い無機,有機の汚濁耐性を示し,他の水生動物が棲めないような強酸高温の温泉に生息する種もある。

 

「蚊柱」は「慶雲」?

 ユスリカの雄で構成されている蚊柱は、「群飛swarming」と言われ、近くにいる雌が群飛の中に飛び込んで交尾する。群飛は雄の配偶行動である。交尾を終えた雌は水辺に移動して産卵する。蚊柱を慶雲とした歴史もある。

 

アリストテレスも記載

 ハエ目(双翅目)は後翅が平均棍こんに退化して前翅だけを残したグループであり,アリストテレス(紀元前350 年ごろ,『動物誌』)はすでにこのグループを認識していた。触角が短い短角亜目Brachycera と,触角が細長い長角亜目Nematocera に分けられる。前者にはアブ科,イエバエ科などが,後者にはユスリカ科やカ科,ブユ科,ヌカカ科などが属する。長角亜目は,ユスリカ科以外では吸血性の種を含むものも見られるが,ユスリカ科は雌雄ともに口器は退化して吸血はしない。しかし,花の蜜を吸う種があることは知られている。

 

成虫は食物を摂らない

 このため、多くの種の成虫は寿命が1 日から数日である。世代数は年1 化から多化まで。幼虫期が2 年に及ぶものもある。幼虫は4 令を経て蛹となる。蛹の期間は短く,数日である。水面に浮上した蛹は胸部背面が縦に裂けて瞬間的に羽化する。日本では,4 5 月と9 10月に羽化する種が多く,また厳冬期に羽化する種もある。ある種の幼虫は「アカムシ」と呼ばれるが,幼虫が赤いのは一部の種で,白黄色,褐色などさまざまである。多くの種の幼虫は水底のデトリタス(有機残渣)食や藻類食であるが,モンユスリカ亜科では肉食性(小さなミミズ類,甲殻類,他のユスリカ幼虫などを捕食)や雑食性の種が多い。陸生の種では幼虫がイネ,野菜などの農作物を食害するものもある。肉食性の幼虫は巣をつくらず,自由生活をする。デトリタス食の幼虫は,唾液で水底の残渣をつづった筒型の巣をつくる。カゲロウ,トビケラ,ヘビトンボなど水生昆虫の幼虫に寄生する種もある。幼虫は,魚類などの水生動物の重要な餌となり,食物連鎖の底辺を支え,生態系にとって重要な構成要素となっている。種によっては真冬でも大量に羽化し,餌が少ない冬季に鳥類の餌になっている。また,従来より幼虫の水質指標性が報告されていて,水質判定に利用されている幼虫はデトリタス食の種が多いので,大量発生する場合は水質浄化にも寄与していると考えられている。しかし,他方で幼虫,成虫のアレルゲン性についても多くの報告がある

 

宇宙旅行のできるユスリカも?!

 熱帯アフリカに生息するネムリユスリカPolypedilum vanderplanki は,乾期になると,幼虫が完全に乾燥して無代謝状態で休眠(クリプトビオシス)することが知られている。トレハロースという糖で体をガラス状にするため、100から-270までの驚異的な温度耐性をもつばかりか、真空状態でも生き続けることが出来る。宇宙空間へ打ち上げたりして、詳細な研究が進み,代謝,遺伝面などの多方面から注目を集めている。

 

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